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2011年01月 アーカイブ

仕事・金・家族 5

しかし、これは異常だ、「君子、危うきに近寄らず」と何もしなかった。

だから、損はしていないのだが、今の世の中に釈然としない。

よくやるな、と思いながらも男は苦々しくほぞをかむ思いで、税理士の大漁話の締あくくりを思い出している。

「まあ、わたしのお客さまでもここまでこられたのは三人に一人。

いろいろ計画を立て、資金の段取りまで付けてもやめた人、踏み切れない人が大半でした。

まあ、最後は度胸のある人しかだめですね」夜風が頬に痛い。

男は頼りになりそうというか、塀の上を刑務所側には落ちないで、上手に歩いていきそうな税理士の顔を思い出している。

案内人が悪ければ、道に迷う。

今夜の面々は真っ当に生きているのだろうか。

いや、これは負け惜しみ、いらぬお節介だ。

男の胸には「この一年、この国の何かが変わった、何かが壊れた。

戦後、俺たちが夢中に働いている間に」との思いが消えないのだ。

時代が移った。

あの国鉄も電電公社さえも民営化してしまった。

「親方日の丸」も「寄らば大樹、の会社の丸抱え」もどこかに消えかけている。

まさに「自己責任」の時代のおとずれを予感させそうな感じですね。

仕事・金・家族 6

男はやはり、一人で生きるしかないのか。

男の人生は会社だけじゃあないのか。

たとえば、会社を辞めて、あと二〇年。

どう生きる?そんなふうに考え進むと、一人の男の顔が浮んでドキッとした。

「引退会見の江川だ」。

江川は二本の足で堂々と立っている。

引退は次なる人生のスタートのため、財テクは万全。

"巨人ファンの江川嫌い"が俺の誇りだったのに、「そんな!まったく、江川ってやつは!」確かに、現代は天下大乱のときで、やる気のある人間にはまさに千載一遇のチャンスで、人生に一、二度あるかないかの大勝負であったようだ。

戦後の混乱期、高度成長期、列島改造期、石油危機、そしてこんどの円高、金余り。

「大変だ、大変だ」といっていたときが、振り返れば、「宝の山」の中だったわけか。

「時化だ、嵐だ」と思って、自分が港に避難していたその時期に、漁に出て網を海に入れていた人がいた。

やるなあ、と思いながらもまだ釈然としない。

「俺が江川のようになるなんて、そんな力も度胸もない」。

平凡な男に「宝の山」はあまりに遠い。

やはり、「身のほどを知る」というのが一番ですね。

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