仕事・金・家族 1
仕事、金、家族。
どれが欠けても生きていくのがつらくなるから…。
男たちの忘年会は浮かぬ顔が多いが、なぜか隣席の忘年会は飛びっ切り元気がいい。
働き盛りの中年から爺さんとしかいえない搬くちゃな老人や中年のしっかりそうな女性も混じっているから職場の集まりではなさそうだ。
係りの女性に探りを入れると、税理士の先生を囲む忘年会だという。
「郎永漢先生に続く会」と銘打って例年盛大に打ち上げをやる。
いわば、税理士を中心にした"財テクくらぶ"なのだが、毎年いちばん儲けた人が幹事をやり、払いを持つ。
中央の席の税理士は、丸顔のいかにも先生と呼ばれるのが似合いそうな男で、得意満面で挨拶している。
「わたしはこの稼業に入っでもう二〇年たちますが、今年(昭和六二年)ほど興奮し、生きがいを感じた年はありません。
皆さんもさぞご満足と思います。
めでたく幹事長になられた阿部さんは二年間に資産をちょうど五倍にされました。
渡辺さんも念願の二桁に乗せて、大願成就。
ひと華もふた華も咲かせなさいました」。
これは爺さんのことらしい。
みなが爺さんのほうを見て拍手している。